聞こえないろう者、聞こえる聴者
はたまたどちらでもない人。
聞こえることと聞こえないことの境界線って何だろう。
そしてその境界線を探る会がある。その名は「ろうちょー会」。
ろうちょー会とは?
2018年の夏より開催されている手話交流サロンのようなもの。
https://www.facebook.com/rochokai/
耳の聞こえないろう者と聞こえる聴者が交流し、お互いの理解を深めることが目的となっています。
開催場所はおもに千駄ヶ谷のビルの一室で行われています(定員15名ほど)
※なお千駄ヶ谷以外にもつくばなど、他の場所にて開催されることもあるそうです。
友人がスタッフを務めているということで、少し前から気になっていたのでした!
ろうちょー会のルールについて
まずスタッフよりルール説明がされます。
「この会では声を出すのは禁止です。」
「声の代わりに手話や筆談、身振りでコミュニケーションしてみて下さい」
と、声に頼らないコミュニケーション方法を指示されます。
「音のない世界」を身近に感じられるよう、聞こえる参加者は耳栓をすることになっています。
手話や筆談・ジェスチャーでコミュニケーションをとることは馴染みの少ない経験だということもあり、最初は少し不安そうな顔をしていた参加者たち。
自己紹介・体験内容
最初に「自己紹介」から始まり、手話やジェスチャーを交えながらスタッフと会話し合う。
手話が分からなくても不思議と、部分的に読み取れる部分はあったりするもの。
全然分からないところは「何?」の手話を覚えて質問したり、表現が思いつかない時は、手で形を表したりするなど他の方法に置き換えて意思疎通を図ろうとしている人もいました。
外国の国の名前などはホワイトボードを用いて世界地図を書きながら
国の位置や名前を当てたり…。
紙に文字を書いて手話で表現したり…。
会話の内容を読み取ろうとしているうちに少しずつ会話が分かってきて打ち解けてきた人もいました。
体験ゲーム
「手話伝心」や「読話伝言」など、音が聞こえない環境ならではの体験ゲームも行いました!
「読話伝言」とは、お題の例文を声に出さず口の形で表し、その内容を伝言する、という読唇術の伝言ゲームのようなもの。
このゲームは参加者全員が戸惑っていました。
「一時にたまごを持ってきてください」
この例文を唇だけで表すと…
→「いいい、あんあおぉ、おっえいえうあぁい」
となり、母音が似たような文だと読み取りにくいことがわかるのです。
「えー、全然わかんない!」「難しすぎる~」という反応もあちこちから出てました笑。
上手く伝わっているもののどこか惜しかったり、変な面白みのある伝言ができたりと盛り上がったり。
この体験を通して、聴覚障害者にとっては”毎日”がこのような感じで常に試行錯誤を重ねながらコミュニケーションをしていることがリアルに感じられます。
ろう文化の説明
最後はろう文化についての説明で締めくくっていました。
「聴覚障害者」は障害の程度や種類が多種多様にわたる、と説明する那須さん。
「生まれた時から聞こえない人、後から聞こえなくなった人、補聴器を付ける人もいるが付けない人もいる。音の情報が必要な人もいれば、不要な人もいる」と語ります。
なお、どう分類するかは個人のアイデンティティによるものが大きいそうです。
「補聴器を着けていても完璧に話が分かるわけではない」
「補聴器の音、口の形、その場の状況を手がかりに会話の内容を想定している」
「駅やイベントのアナウンス、会議など複数人数での会話、居酒屋など雑音が多いところは会話を読み取れず、孤立してしまうような感じを受けること」 などなど。
日常生活時におけるシチュエーションなどを例にあげつつ説明していました。
情報が正確に伝わらなくてもどかしい思いを伝言ゲームで体験してきたからか、
参加者は皆、真剣な顔でその話を見て聞いていました。
ろう文化について説明が終わった後はフリートークの時間。
ここでやっと耳栓を取ります。
耳栓を取り、音が戻る瞬間に少しだけホッとする表情を見せる参加者もいれば、耳栓を取ったあともそのまま声を出さず手話でろう者と話している参加者もいました。
ろうちょー会の開催に至ったきっかけ
この会を開いたきっかけをスタッフの長井さんに聞いてみました。
「きっかけは、会社の人とすれ違いが起こった経験から、ろう者と聴者がお互いに歩み寄る必要があると気付いたんです。そこで、ろう者が職場の同僚を気軽に誘えることができるような、理解を深めてもらえるようなイベントを作りたい、と思い立ち開催に至りました。」と話す長井さん。
「こういう会を開くことで、健聴者の人が聞こえない世界を知ることができるのは互いのコミュニケーションに必要であり、歩み寄るきっかけとなれたらいいと思っています。」
近年はユニバーサルサービスの観点から、少しずつ障害に対する理解やハード面でのサポートが世の中に広まっているものの、まだまだソフト面での理解が足りない部分が多くあるそうです。
また、ろう者は悩みを持っていても、コミュニケーションの壁によって伝達することを諦めてしまうことが少なからずあり、必然的に表に出すことが少なくなり悩みが表面化されにくいとも。
そこでろう者当事者の声や背景にある文化を明確に発信することで、周りの人(健聴者)がその声をきちんと認知し、共有させることが大きなポイントになってきます。
最後に
「人は皆、何らかの障害をもっている」という言葉があります。
もしも突然病気や事故で声が出せなくなったら…
もしも老いで耳が遠くなって聞こえなくなったら…
もしも突然疎外感を感じるようになったら…
などなど。
その時に備えて、今、異文化コミュニケーションの方法を体験してみるのも良いかもしれませんね〜!
ダイアログ・イン・サイレンス
似たようなイベント体験としては「ダイアログ・イン・サイレンス」があります。
https://www.dialogue-in-silence.jp/
こちらはエンターテイメント性が強いですがテーマのコンセプトとしては似たような感じです!
ろうちょー会スタッフの皆さんお疲れ様でした〜!
これからも継続的に開催されるようなので楽しみです。笑
https://www.facebook.com/rochokai/
あしゅらん